友人の高美さんからの相談は「夫婦二人で定年後に暮らせる家を探しているところに、今の地域内で売り出しが出ている土地を紹介してもらった。この土地を買って、希望の家を建てられるか?」「現在マンションに居住、売って平屋を建てたい。日差しの多い部屋にしたい。」とのこと。jw_cad、スケッチアップ、velux_daylight_visualizerで確認してみた。
土地条件
北側接道で幅員は6m。周囲の建物はおおよそのサイズで、位置は敷地内・道路から測距計で計測したもの。
予算の都合でミニマムな広さにしたい、車は乗用車1台にする。将来に備えバリアフリーにしたい。
住宅の計画など慣れていないので練習を兼ねてやってみた。気に入れば友人の建築士に渡し、協力業者さんの工務店を紹介することで納得してもらった。
近隣建物による日影確認
近隣家屋の屋根は4/10勾配、軒の出0.45、軒高さ5.85mでおおよその計測をして有効な配置位置を確かめる。
日影図から1F床面(GL+0.4m)への日射は、東・西面ではほぼない。高窓(GL+3.3m)への日射を取り込んで時間の流れ・季節の移り変わりを楽しめるように考える。
敷地は北面接道で、間口8m 奥行13mなので北面に縦列駐車スペースを設ける。南側敷地を大きく空けて高窓を配置することとした。
プラン配置検討
北接道のストックプラン(12.25T)をはめてみた。
<春分秋分 1F床面(GL+0.4m)への日影>
- 東面:東住戸より10:30頃まで日影を受ける
- 南面:南東住戸より9:30頃まで日影を受ける
- 南面:南側住戸より10:30頃まで日影を受ける
- 西面:西側住戸より13:30以後日影を受ける
- 南面は10:30から15時頃まで陽射しを得ることが出来る
<春分秋分 高窓下端(GL+3.3m)への日影>
- 東面:東住戸より9:30頃まで日影を受ける
- 南面:東住戸より9:30頃まで日影を受ける
- 西面:西住戸より15:30頃から日影を受ける
- 南面は9:30から15:00頃まで陽射しを受ける
- 西面は10:00から14:00頃まで陽射しを受ける
このプランだと通路・建具開口幅が狭くて自力での車いす生活に対応できないが、介助を受けての通行は極小車いすを使えば通行できないことはない。とりあえず平面・断面を作ってみた。
玄関は道路からの車いす進入を考え、建物の脇入りとした。
南面にダイニング・居間を設置、寝室は建具上を抜けば奥まで陽射しを入れることが出来る。
建具は引戸を使い、車いす通路幅を750㎜以上採れるようにした。
車いす通路幅が十分採れないプランになっている。
居間・ダイニングだけを吹抜にするか、キッチンまで延長するか、高窓の高さを検討する。GL+3.1程度だと春秋期にはあまり有効に働かない。
屋根を片流れにし、寝室まで陽射しが入るようにするか、キッチン西面に高窓を作るかの案もあり、ここで友人に中途説明をした。
居間・ダイニングの中の陽射し、明るさを検討
南住戸の屋根が切妻、軒の高さが6m程度、外壁からおよそ5m程度の距離を空けることで北接道、平屋でも陽射しの入る家は作れると理解してもらった。 自力走行の車いすには通路幅が足りないことも理解していただいたが、片流れ屋根にして、住戸内の陽射しや明るさを出せないかと要望されたので作ってみた。
>>日射確認
8:30では1F掃出窓からの日射は無い。高窓(17-10)からの陽射しを受ける。
寝室の建具上を抜けば奥まで入れることが出来る。
9:30では1F掃出窓から日射を受け始める。高窓(17-10)からの陽射しを受ける。
寝室の建具上を抜けば奥まで入れることが出来る。建具を全解放して入れることが出来る。
南住居の影が南面に正対してくる。
10:30では1F掃出窓から、高窓(17-10)からの陽射しを受ける。
寝室の建具上を抜けば奥まで入れることが出来る。建具を全解放して入れることが出来る。
11:30では1F掃出窓からの日射は居間の1/3程度となり、高窓(17-10)からの陽射しは東面内壁に落ちてくる。
寝室への日射はなくなる。
>>西面の検討
高窓レベルでの日射は12:00~16:00まで期待できる。キッチン吊戸棚の上から内部に入れることも可能。
>>昼光分布の確認
右図(次)は大空の状態が曇り大空照度16,291lx、春分12:00の照度0~750lxまでの分布を表す。
通常設計では大空照度15,000lxの時、昼光率2%で物書き作業に充分な明るさとの目安があります。(学校の普通教室)この時の照度は300lx。
読書をするために必要な照度は500~1000lx(図書館の閲覧室等)、ダイニングで食事をする場合は150~500lxとされている。
以上は、年間に長時期となる春・秋に、一日の中間時間で計測した(計測時間は春分の12:00)。これにより、本件の場合充分に明るい室内環境であると考えられる。(オレンジ色で560以上 赤色で660以上 max750lxで計測)
最後に
以上を友人に報告した。使ったソフトはjw_cad、グーグルスケッチアップVer8、velux社のdaylight_visualizerです。全て、フリーソフトです。
平面図・断面図作成時には馬目、杉井、戸田さんのjw_cad外部変形を使っています。X-knowledge社発行のノウハウ本から自前環境に改変させていただいて使用しています。有益なソフトの公開に感謝申し上げます。スケッチアップはVer8を施工図屋の納まり確認として現役で使用させてもらっています。daylight_visualizerは今回初めて使ってみましたが操作説明もあり手軽に作成できました。計画設計って面倒ですね。お客様がどこで興味を抱いていただけるか、慣れない私には感触がつかめないです。この先は友人の設計屋さんに修正してもらいました。
>>おまけ
後輩からスケッチアップの検討ファイルを見せてくれとの要望があり、載せておきます。内観ファイルはテクスチャー入りでファイルサイズ(5M超え)が大きいので止めておきます。シーンを変えて別ファイルにしているだけです。内部を春分等の別シーンを作って試すことができます。